老子の言葉をわかりやすくお届けします

止まらない欲望との付き合い方

空いた時間にボーっとネットサーフィンをしていて、
なにか新しい商品を発見した時。

 

「あ〜、新しい○○出たんだ!」
と、ついついポチッと「購入する」をクリックしてしまう…
ということはよくあることですよね。

 

しかし、数か月(ものによっては数習慣、数日…)もすれば、
その商品はすでに「新」商品ではありません。
他にもっと機能の高いもの、デザイン性に優れたものがお目見えしていて、
「やっぱりこっちが良いな。買い換えようかな」と思ってしまうかもしれません。

 

電気製品も服飾品も書籍も…どんな分野のどんな企業だって、
「一つでも多くのものを売ろう」と必死です。
次々の新商品を出してきますから、毎回その策略に踊らされていては
お金がいくらあっても足りませんよね。

 

そこで、老子の有名な言葉、「止足の戒め」が生きてくるわけです。
「止足」とは、読んで字のごとく、足を止めること。
上記の例に当てはめると、
「購入ボタンをクリックしてしまう前に踏みとどまること」です。

名誉と身体、どちらが大事?

どうすれば、不必要な買い物を繰り返さずに踏みとどまることができるのか。
どうすれば「止足」できるのか。

 

老子の教えによれば、「足る」を知ることができれば
欲望の停止線を超えることはないのだと言います。

 

「知足不辱、知止不殆」
(足るを知れば辱められず、止まるを知れば殆うからず)

 

満足すべきところを知れば屈辱を免れ、
とどまるべきところを知れば危険な目に遭わない。
…つまり、満足すべきところを知らないから、
留まるべきところを知らないから、
人は際限のない欲望に振り回されてやがて破綻してしまうというわけです。

 

老子は、上記の言葉(有名な「止足の戒め」)で
ひたすらに名誉や財産を求めることの“愚かさ”を戒めていたようです。

 

「名誉と身体はどちらが大事か?どちらに価値があるか?
人間らしく生きるには、名誉や財産よりも身体と健康が大事なハズでは?」
…このような問いかけを繰り返し、
欲望をコントロールできずに「もっと、もっと」と物や財を貪る人間たちを
正しい道へと導こうとしていたんですね。

 

確かに、「健康がなにより大事な財産だよ」と言われても、
病気になってみなければそのありがたみはわからないものです。
身体の自由が利かなくなってはじめて、
自分がいかに恵まれていたか、
富や名声よりも価値あるものが何であるかを思い知らされるのです。

 

だからこそ老子は、「目の前にあるものをまずは大事にしなさいよ」と、
当たり前の日常に目を向けることを教えていたのかもしれませんね。

欲望を抑えられないことは恥ずべきこと?

「足るを知れば辱しめられず」という「止足の戒め」にも表れているように、
老子は、「足るを知らないこと」=「満足することを知らない」のは
恥ずべきことだと考えていたようです。

 

実際、“満足”を知らなければ、いくらお金を使っても、
いくら物が増えても、際限なく“欲望”が生まれてしまいますよね。

 

「これくらいでいいや」と満足してしまったら、その上を目指せない。
そんな上昇志向のない生き方でいいのか!?

 

…そのような考え方もありますが、
何事も「身の丈」「適度」を知ることは大事です。
これを見極めることができないと、
人生にはずっと「不満」「物足りなさ」がつきまとい、
幸せを感じることができないでしょう。

 

物質的にも、心理的にも、
「足る」を知ることは幸せになるための一つのキーワード。
そう言っても過言ではないのではないでしょうか。