静かで強く、何があっても動じない
万物の根源、「道」に従った生き方を理想としていた老子。
自然の摂理に逆らうことなく、“ありのまま”で、決して無理をしない。
…口で説明するのはたやすいことですが、
老子が言うような生き方を実行するのはなかなか難しいことではないでしょうか。
なにしろ、人は“無理”をしたがるもの。
現代社会にあっては、
「“ありのまま”の自分に甘んじていたら、置いてけぼりにされるのではないか」
「無理をしない、なんて言っていたら、仕事を干されちゃうよ…」
そんな不安もついてまわることでしょう。
では、老子の言う「理想像」とはどのような人なのでしょうか。
様々な表現の仕方がありますが、一言で言うならば
「静かで強く、何があっても動じない人」でしょう。
そして、100%に満ちることを望まない。
自分にとっての“足る”を知っている人物だからこそ、
それ以上の無理をしないのです。
このような理想の人物像を、老子は、
しなやかで柔軟な「水」、重厚な「木」、穏やかに溶ける「氷」、
度量(スケール)の広い「渓谷」、濁って底が見えない「流れ」
…など、自然の物になぞらえて考えていたようです。
常に“八分目”が理想
老子が繰り返し唱えていたのが、「“足る”を知る」ということ。
100%に満ちていなくても、「自分にとってはこれで十分だ」という
いわゆる「八分目」の状態を保ちなさいよ、ということです。
この教えがよく表れているのが、次の言葉。
「保此道者、不欲望。」
(道を保つ者は、満つるを欲せず。)
道に従う人は、何事もいっぱいに満ちることを望まない。
100%まで満ちるのではなく、80%の状態をキープしていれば、
残りの20%の部分にはまだ“何か”を入れられるわけですよね?
いっぱいいっぱいの「キャパオーバー」の状態に自分を追い込むのではなく、
常に2割程度は“空き”を残しておくこと。
それができる人は、何か急なトラブルに見舞われても柔軟に対応できるよ、
リカバリーできるんだよ…と、老子は教えていたのです。
余裕がある人は強い!
「100%満ちることを望むべきではない」
という老子の言葉は、私たちの日常に置き換えてみても「言い得て妙」です。
例えば仕事。
100%の力をフルに使ってなんとか納期に間に合う…
という「キャパシティーいっぱいいっぱい」の状態で仕事をしていると、
何か不測の事態が生じた時、納期に間に合わなくなってしまいますよね。
体調が悪い日もあるかもしれませんし、
使用する機器に不具合が生じる可能性もあります。
そんな“万が一”を見越して、
「100%満ちる」という状態を避ける余裕を持つこと。
これを心掛けて仕事をしていれば、多少のトラブルがあっても
フレキシブルに対応することによって納期を守れるハズです。
確かに、キャパいっぱいに満ちているほうが、
“お金”という面では効率的に稼ぐことができるかもしれませんが、
その反面、「万が一の場合の損失も大きい」というリスクもありますよね。
なにしろ、首が回らないほどフルな状態で稼働しているわけですから…。
そのように考えてみると、老子が言うように、
結果的には「余裕がある人」のほうが社会的信用を失うこともありませんし、
“強い”と言えるのではないでしょうか。
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