老子の言葉をわかりやすくお届けします

孟子思想の特徴は?

古代中国の思想史において、
老子や孔子、荘子と並んで良く登場するのが「孟子」
名前は知っているけど、その思想についてはよくわからない!
…そんな方が多いのではないでしょうか?

 

孟子は、孔子と同じく「儒家」の一人です。
つまり、老子の思想とは対照的な思想ですね。
(老子は儒家思想を痛烈に批判していたことで知られています)
孔子が儒家のNo1とするなら、孟子は「二番手」と考えるのがわかりやすいです。

 

その思想の特徴を一言で言うと、
「修己治人、克己復礼」
つまり、自分の身をきちんとしていなければ人を治めることはできないということ。
社会的な規範(礼節)を重んじた思想と言えるでしょう。

 

とりわけ孟子が大事にしていたのは「仁義」です。
同族的な「仁=(人間愛)」+社会規範的な「義」。
ここが、「仁」すなわち愛を重んじた孔子との違いですね。
なぜそのような違いが生じたかというと、
孟子の時代になると他の民族や部族との交流も盛んになってきたため、
愛だけではどうにも収まりがつかないことが増えてきたから…
という解釈が有力のようです。

 

ちなみに、老子はそのような形式的なものをバッサリと一刀両断!
「仁義だのをことさらに重んじなければいけないのは、
人が人としての心を忘れてしまったからだ!
道=自然の流れに従って生きていれば、
そんなものをわざわざ教えられる必要なんてないのに…」

 

人が人として当たり前に持っているべきものがなくなっているなじゃないの?
と、世の中に対して警鐘を鳴らしていたわけですね。

学んでプラスするか、それともマイナスするか…

孔子は、言わば「聖人君子になるための道徳」を説いた人。
一方の孟子は、過激な革命的色彩が強い書物として捉えられることが多いです。
しかし、いずれにしても、「学ぶこと」それによって「知識をプラスしていくこと」を
重んじた教えであったと言えます。

 

これに対して老子は、

 

「学べば学ぶほどに自分を空っぽにしていけ!」

 

という「引き算」の教え。
学んだことによって、価値観や知識の縛りからどんどんフリーになれ!という教えです。

 

普通に考えれば、学ぶほどに色んなことを覚えて知識が蓄積されていくわけですから、
学ぶこと=プラスですよね。
それをあえて、「マイナスにせよ!」というのですから、
そこがやっぱり老子らしいですね(笑)。

 

老子曰く、知識があるからと言ってその人が優れている人とは言えない。
人間的に優れている(=自然の摂理をわきまえている人。それに従っている人)ほど、
学べば学ぶほどに、自分の中をからっぽにしていけるものなんだよ…と。

 

確かに、学問、とりわけ物理や化学、生物、地学といった自然科学を学ぶと、
「自然ってスゲーっ!」
「人間の技術じゃ太刀打ちできないことがいっぱいあるじゃん」
と、ある種の畏怖を感じることがありますよね。
すなわち、学べば学ぶほどに、自分の無力さを思い知らされる…。

 

もちろん、学んだことをプラスして生かしていけるからこそ
人間は文明を築くことができたのでしょうし、老子と孟子を比較して
「どちらの思想が正しい」とか「間違っている」とか論ずることはできません。

孟子はどんな教えを残しているの?

老子思想とは対照的な孟子の思想。
では、具体的にはどんな言葉(教え)を残しているのでしょうか。

 

☆為さざるなり。能わざるに非ざるなり

やってやれないことはない、やらずにできるわけがない。
…これから何かしら新しいことを始める時に勇気をくれる言葉ですね。
しかしこれ、老子の「千里の道も一歩から」に似ていませんか!?
つまり、何事も最初の一歩を踏み出すことが最も難しいけれど、
それを踏み出さなければ、始まらないということです。

 

どんなことでも、まずは覚悟を決めて、エイッと踏み出すことが大事!
思想が違っても、ココの部分の本質は一緒なのでしょうね。

 

 

☆敵国外患なき者は、国恒に亡ぶ

国外に敵国のプレッシャーがなければ、国は滅んでしまう。
…これは、ライバルがいるからこそ、警戒心や結束力が向上し、
国を守ることができるんだよ。
だからライバルの存在は大事なんだよ、という教えです。

 

最近は、むやみに競争しない、他者に左右されずにマイペースを貫くというのが
理想的な生き方とされているようですが…。
実際、老子の思想は「戦わない」「周りと比較しない」「身の丈を知って無理をしない」
というのが基本ですから、孟子のこの言葉とは対照的と言えるでしょう。

 

しかし、意識する相手がいなければ人は成長できないという見方ができるのも確か。
勉強にしてもビジネスにしても、切磋琢磨する競争相手がいるからこそ、
人は「もっと自分を高めよう」「相手に追いつこう」として成長することができるのです。
老子の言う「争わない。戦わない」という教えももっともではありますが、
自分を高めてくれる敵と競争することは、時には必要なことなのではないでしょうか。