老子の言葉をわかりやすくお届けします

仕事と家族と趣味と…

「ワークライフバランス」という言葉、
数年前からよく使われるようになりましたよね。
「ワーク=仕事」と「ライフ=生活(仕事以外のこと)」のバランス
…みなさんは、うまくバランスを取れていますか?

 

家庭を持っている方の中には、

 

「“ライフ”は、さらに“プライべート”と“ファミリー”に分けられるのでは」

 

と感じている方も多いことでしょう。
確かに、仕事から離れた時間であっても、
「本当は読書をしたいけど、家族サービスをしないといけない」
というケースは多いですからね。
お子さんが小さいうちは、とくにその傾向が強いのではないでしょうか。

 

仕事一辺倒になっている人、
家族や趣味を優先している人、
どちらも半々で、バランスを保てている人。
いろんな方がいると思います。
また、このワーク・ライフ・バランスは、就職、特に転職先を決める上での
一つの基準になっているようです。

 

実は、『老子』の中にも、
このワーク・ライフ・バランスに触れている言葉があるんです。

仕事か、遊びか。それを判断するのは誰?

老子によれば、「生きる達人は仕事と遊び、労働と余暇の区別をつけない」のだとか。
つまり、仕事だろうが、育児だろうが、趣味だろうが、
向き合い方に区別はつけず、その道で卓越することを目指すというのです。
仕事以外の時間は気が抜けてしまう、手を抜いてしまう
という方にとっては耳の痛い言葉ですね(笑)。

 

老子によれば、「その行いが仕事か遊びかは周りが決めてくれる」。
だから仕事でも遊びでも、本気でやれよ…ということでしょうか。

 

確かに、仕事であっても「お前、遊んでるのか!?」と突っ込みたくなるような
クオリティーの低い仕事をする人もいれば、
趣味の一環でやっているのに「お金もらったほうが良いんじゃない!?」
と言われるような品質の高い仕事をする人もいます。
「仕事」と言って良いレベルか、はたまた「趣味の延長」か。
それを判断するのは、確かに、自分ではなく周りですよね。

 

「仕事だから頑張る」とか、「趣味だから、クオリティーを気にせず楽しむ」とか。
そんな風に仕事と趣味の間に線を引いているなんて、
老子に言わせれば「お前ら、甘いゾ!」というわけです。

なぜ、今、「ワーク・ライフ・バランス」が注目されているの?

老子の思想に触れると、「ライフワークバランス」なんて権利ばかりを主張して
仕事の束縛から逃げることを考えている自分たちが
非常に軟弱に思え、恥ずかしささえ感じます。

 

「仕事に使う時間をどう捉えるか」
これはまさに、その人が自分の人生を楽しめるかどうか、
最期に自分の人生を肯定して受け入れられるかどうかを左右する問題です。

 

それにしても、なぜ、最近になって
さかんに「ワーク・ライフ・バランス」が叫ばれるようになったのでしょうか。
内閣府が発表した「憲章」には次のように記載されています。

 

「人々の働き方に関する意識や環境が
社会経済構造の変化に必ずしも適応しきれず、
仕事と生活が両立しにくい現実に直面している。

 

誰もがやりがいや充実感を感じながら働き、
仕事上の責任を果たす一方で、
子育て・介護の時間や、家庭、地域、自己啓発等にかかる
個人の時間を持てる健康で豊かな生活ができるよう、今こそ、
社会全体で仕事と生活の双方の調和の実現を希求していかなければならない。」

 

…確かに、仕事一辺倒で家庭生活がおろそかになれば、
子育てに支障が出て子供が健全に育たない可能性も考えられます。
子供は社会からの預かりもの、いずれは社会に返す人材ですから、
その育成につまずくということは、究極的には
社会全体の成長や発展が危ぶまれることにつながるとも考えられます。

 

逆に、家庭や自分の趣味ばかりを優先していれば、
企業の成長は阻まれ、社会全体の経済活動にも支障をきたすでしょう。
政府の言葉にもあるように、仕事と生活の調和、
すなわち「ワーク・ライフ・バランス」と経済成長は
いわば「車の両輪」のような関係にあるんですね。