老子の言葉をわかりやすくお届けします

個人の生き方の“ヒント”が学べる

老子の思想は、なぜ、今なお私たちの心を魅了するのでしょうか?
一度その世界観に触れると、人は皆、
多かれ少なかれ影響を受けると言っても過言ではありませんが…。
『老子』の最大の魅力とはどのようなことなのでしょう。

 

人によって受け取り方は異なりますが、やはり、
「単なる政治書や教育書ではなく、個人の生き方のヒントが隠されている」
という点が老子の魅力と言えるのではないでしょうか。

 

本来は「国を治めるのならば無為自然な在り方が望ましい」
と、政治家の理想的なスタンスについて教えている書物ですが、
これは私たち個人の生き方でも学べる部分が大きいですよね。

 

「ありのまま生きよ」「無理をしないで」「頑張り過ぎないで」
…このようなメッセージは、
「もっと、もっと」とひたすら“上”を目指すことが美徳とされている現代社会において
疲弊感や絶望感、疎外感を覚えている人たちに生きる力を与えてくれます。
「生き方はもっと多様であって良い」というシンプルなその教えに、
ハッとさせられたという方も多いのではないでしょうか。

 

…とはいえ、老子は負けっぱなしの人生を肯定していたわけでもありません。
「戦わずして勝つ」という言葉が表しているように、
“正面衝突”を避けていかにして勝ちにいくか。
「ありのまま」と言いながらも、一方では勝ための“戦術”を重んじた
その「二面性」もまた、老子思想の魅力の一つと言えるのかもしれません。

世界の偉人たちも…

孔子に代表される『儒家思想』とは真逆の思想を展開した老子。
世界の偉人たちの中にも、その魅力のとりこになっていた人物が少なくなかったよう。

 

例えば、『戦争と平和』で知られるロシアの作家、トルストイ
彼は、老子思想の魅力に大きな影響を受けていたことで知られています。
特に、著作『イワンの馬鹿』は、老子が説いた
「戦わずして勝つ」という理想のあり方が表現されていることで有名ですね。

 

また、そのトルストイと親交があったと言われている
インドの政治家、マハトマ・ガンジー
彼自身が老子の思想に影響を受けていたかどうかは定かではありませんが、
トルストイの思想を絶賛していたと言われていますから、
間接的には老子の思想に非常に近い考え方の持ち主だったのでしょう。

 

そして、我らが日本では、作家の武者小路実篤!
著作『新しき村』に描かれているのは、
老子が理想とした社会をお手本にした世界だ…と言われています。
彼はトルストイに心酔していたとも言われていますので、
老子思想の魅力のとりこになっていたことは疑いようがない事実のようです。

人間の“根源”に迫る思想

老子の思想はまた、アメリカのヒッピーにも影響を与えていました。
ヒッピーとは、60年代のアメリカで生まれた言葉。
既成の社会体制や伝統、価値観を否定し、
「脱社会的行動」をとる若者たちを称した言葉です。

 

「文明以前の野生生活への回帰を提唱する人々」をも意味していることからも分かるように、
そこには老子の思想が強く影響していることがうかがえますね。

 

人間とはなにか、人間はどう生きるべきなのか。
その“根源”を問う老子の思想は、
私たちが当たり前のように従ってきたルールやしきたり、価値観さえも
いとも簡単にひっくり返してしまいます。

 

その深い洞察力、スケールの大きさが、老子の最大の魅力ではないでしょうか。
これからも時代を超えて、老子の言葉は人々の心を魅了していくことでしょう。