老子の言葉をわかりやすくお届けします

地震にも台風にも負けない究極の強さ

阪神淡路大震災に、東日本大震災。
そして、年々増え続ける強大な台風やゲリラ豪雨。
…今、建物の耐震性が厳しく問われています。

 

実際、2000年には、建築基準法も改正されていますよね。
(従来の「許容応力度等計算」に加え、
構造計算法として「限界耐力計算法」認められています)

 

そんな中にあって、千年以上もの長きにわたって
一度も倒れることなく同じ場所に立っている木造建築物があります。
それは、世界最古の木造建築としておなじみ!
法隆寺の「五重塔」です。

 

なんと、樹齢2000年以上ものヒノキが心柱として使われており、
建築されてからの年数も合算すると
ゆうに3000年を超える年月をこの世で過ごしていることになります。

 

この五重塔は、まさに老子の理想を体現している建築物!
「善く建てたる」建築物の代表例と言って過言ではないでしょう。

しっかりした建物に宿る力とは?

しっかりと建てられた建築物の強さを表して、
老子は次のような言葉を残しています。

 

「善建者不抜、善抱者不脱」
(善く建てたるは抜けず、善く抱けるは脱せず)

 

しっかりと建てられたものは引き抜かれることがなく、
しっかりと抱え込まれたものは抜け落ちることがない。
…これはまさに、五重塔ですよね!

 

実際に五重塔をご覧になったことがあるという方は実感されたと思いますが、
そのたたずまいには、“霊力”とも“魂”とも、
とても言葉では言い表せないような力が感じられます。

 

それはまるで、“徳”を積んだ一人の人間のよう。
しかも、その年月たるや、
人間の一生とは比較にならないほど長いものですから…。
「ただそこに立っている」というだけで、
そこを訪れる誰もが目を奪われるような圧倒的な存在感を放っています。

 

老子の言葉を“地”でいく建築物ですが、
単なる「建築法の手本」としてではなく
そこに、私たち人間の「生き方」の手本をも感じることができる。
…この点が、多くの人々が五重塔に魅せられる理由なのかもしれません。

人の生き方にも通ずる教え

老子の「善く建てたるは…」の言葉には、
確かな建築物の在り方のみならず、
私たちの「生き方」「身の修め方」についてのメッセージも込められています。

 

すなわち、道(万物の根源)に従った生き方をしていけば
そう簡単に折れてしまうことはないよ。
そのようなしっかりした生き方をしていれば、
それが個人から家族へ、家族から地域へ、地域から国へ、
そして社会全体へ…とグローバルに広がり、
徳と活力に満ちた世の中が出来上がるだろう…と言うのです。

 

やや、理想が過ぎる印象もありますが…(笑)。
確かに、この社会を作っているのは私たち一人一人。
だからこそ、個人がどう生きるかが重要なことなのだよ…。
老子は、建築物の例を挙げて、私たちの生き方を戒めていたのでしょう。

 

「自分一人が生き方を変えたって社会は変わらない」

 

このように諦めてしまいがちですが、
IT技術が飛躍的に進歩した現代社会にあっては、
これまで以上に“個人”が力を持つ時代。

 

自分の生き方一つで社会が変わる可能性もある!
そのような強い自覚を持って、自分の生き方に責任を持ちたいものですね。