老子の言葉をわかりやすくお届けします

本当の“智者”とは…

“智者”という言葉を聞いて、みなさんはどんな人を思い浮かべるでしょうか?

 

知識が豊富な人?
弁が立つ人?
献身的な人?

 

…老子によれば、智者とは他人を理解できる人。
他人の能力や適性を含めて見極めることができ、
なおかつ他人を思いやることができる人が「智者」だとされています。

 

しかし、老子の思想には、「智者」のさらに上をいく存在があります。
それが、「明智の人」
どういう人を意味するかと言うと、簡単に言うと、
「己=自分」のことをよく知っている人のことです。

 

老子によれば、他人のことを知るだけではせいぜい「智」にとどまるのであって、
己を知る者こそが「明智の人」だというわけです。

 

ここで言う“明智”とは、文字通り、明らかに智る(さとる)こと。
これは、人を知ること以上に難しいことです。

真の自分を知っていますか?

「知人者智、自知者明」
(人を知る者は智なり、自ら知る者は明なり)

 

他人のことが分かるのは智者と言えるが、
真の自分(己)を知る者こそ明智の人である。

 

…みなさんは、自分のことをどれだけ知っていますか?
本当の己(自分)について100%理解していると言い切れるでしょうか?

 

力があれば、他人には勝てます。
しかし、自分の欲望や弱さを克服するには、強い意志が必要!
己の弱さを含めて全てを受け入れ、
それを操れるコントロール力がなければ、己を律することはできません。

 

禁煙ひとつとってみても、「なかなか成功しない」という人は、
結局は己の“弱さ”の根源にあるものを理解できていないのではないでしょうか。
なぜ、自分はタバコを止められないのか。
タバコにすがらざるを得ないのは、そこに何らかの“甘え”があるからです。
甘えずにいられない“弱さ”が何に起因しているのか、
己の“根本”にあるものを理解して克服できない限り、
禁煙は成功しないかもしれません。

 

それだけ、“己”を知ることは難しいことであり、
ましてそれをコントロールすることは、相当の意志の強さがなければ実現できないでしょう。

 

己を知れば負けることはない

己を知ることを重んじたのは、老子ばかりではありません。
中国の兵法書の決定版、『孫子』にも、同じような教えが記されています。

 

「彼を知り、己を知れば、百戦するも危うからず」
相手(敵)のことを知って、己(味方)のことをよく知っていれば、
何回戦おうが負けることはないのだ…というわけです。

 

相手の特性を知った上で、「己のどんな面を生かして戦いに臨めば良いのか」
これを冷静に見極めることができれば、負けることはないでしょう。

 

戦争に限らず、私たちの日常生活においても、
どんな出来事にも柔軟に対処できる人というのは強いものです。
それは、己の弱さも強さもよく知っていて、
「どこまでやれば自分にとって“無理”になるのか」
「自分にはどこまでできるのか」
という見極めがうまくできているからなのではないでしょうか。

 

これは、老子の思想の根幹である「無為自然」にもつながる生き方。
己を知り、己の弱さや愚かさを全て受け入れた上で己をコントロールする。
それができれば、人生はもっとラクに、楽しく生きられるのかもしれませんね。