老子の言葉をわかりやすくお届けします

何事も「余裕」がカギ!

「○日までにここまでやる」
「納期は△日まで」
「■時までに集合!」
「袋一杯分まで詰め放題!」

 

…考えてみれば、私たちの日常にはそんな“ゴール“があふれています。

 

しかし、同じ約束をしたとしても、ゴールに至るまでのプロセスは人それぞれ!
制限いっぱい粘る人もいれば、ちょっと“余裕”を持たせて行動する人もいますよね。

 

例えば、1時間あれば到着する距離を車で移動する場合、
約束の時間のギリギリ1時間前に出発する人もいれば、
2時間前に出て、途中で休憩をはさんで移動する人…。
「とにかく約束の時間に間に合えば良いじゃないか」と思われるかもしれませんが、
ここには、意外と、その人の「生き方」、「人生に向き合うスタンス」が表れるものです。

 

老子によれば、物事には「余裕」が必要。
無理をしても物事はうまくいかないし、その無理は長続きはしない…
というのが老子の教えなのです。

 

車のアクセルだって、ずっと踏みっぱなしでは疲れてしまいますよね?
確かに、約束の時間には間に合うかもしれませんが、
運転だけでグッタリしてしまって、その後の商談に身が入らないようでは本末転倒!

 

ちょっと早く着いて、コーヒーを飲んで一服するくらいの余裕があったほうが、
気持ち的にも肉体的にもラクではありませんか!?

 

器いっぱいの水はいつかこぼれる

「持而盈之、不如其已」
(持してこれを盈たすは、その已むるに如かず。)

 

器をいっぱいにしたままにしておこうとするのは、やめたほうが良い。
…老子のこの言葉を理解するのに最もわかりやすいのは、器いっぱいに満たした水。
タプタプに満ちた水をこぼさずに持っているのは難しいですよね?
器にちょっと余裕を持たせておけば、水を一滴もこぼさずに運ぶことだって可能です。

 

老子は、そこから転じて、
「絶頂に達したものを維持しようとしても無理が生じる
だから、ずっと“満たした状態=てっぺん”にあることに固執するな。
100点満点なんて取らなくても良いから、
悠々と自然に、余裕を持って自由に生きろ」と教えています。

 

これは、老子と同じように中国を代表する思想家である孔子や孟子、
いわゆる「儒家思想」とは対照的な考え方。
なぜなら、儒家思想は、どちらかといえば「完璧」を目指す思想だからです。
(「仁義礼智信」を重んじ、品行方正な“君子”を育てる思想)

 

ちょっと自分に無理をさせても“完璧”を目指して生きるか?
それとも、常に“余裕”を持たせて、人生の景色を楽しみながら生きるか。
あなたなら、どっちを選びますか?

“からっぽ”のススメ

物事に「余裕」を持たせることの大切さを説いた老子ですが、
同様に、「からっぽ」であることも推奨しています。

 

「道沖、而用之或不盈」
(道は沖なれども、これを用うればまた盈たず)

 

老子の言う「道」とは、万物の根源。
この世にある全ては、この「道」から生まれたのだと彼は考えていました。

 

老子によれば、その「道」は、からっぽで何もないようでいて、
使っても使っても無限の働きが出てくるもの。
だからこそ、次々と物を生み出すことができるのだといいます。

 

私たちは、どうしても、「余裕なくいっぱいいっぱいに満ちている状態」
を好む傾向がありますが…。
実は、からっぽで余裕がありまくり!という状態のほうが、
多くの物を受け入れることもできますし、同時に、
新しいものを作り出して世に送り出すこともできる!

 

「自分ってからっぽだな」「自分って暇なやつだな」
…そんな思考にとらわれたら、
「余裕」の意義を説いた老子の言葉を思い出してみてください!